そらのいろ

ゆめのなかをたゆたうような。恋をした。恋を知った。何かが変わった。何かがこわれた。なみだが、こぼれた。ありきたりな。そう、きっとどこにでもある。だけど自分にとっては唯一のモノガタリ。おわらないゆめを。さめないゆめを。恋が、すべてを変えて。些細なことが、こころを揺らす。なんでもないことが、胸をくすぐる。

そらのいろが。何処までも綺麗で。泣きそうになる。

声がなぁ、そう云って。彼は笑った。 あまり感情を顕わにしない彼の。とても綺麗な、笑顔。

声が、良ぇなぁ。そう、思ったんよ。あの声を探して。ずっと、探して。 しあわせ、なんよ。届かない。掴めない。あのひとを。ずっと、探しているんよ。

人ごみ。雑踏。ざわめくその音の中に。あるんじゃあないかって。 あの、声が。

居るはずもない、あの姿を。わかっているのに、探している。

いまも、探している。あの声を。ずっと。聴きたくて。 たとえば。くるまの窓から垣間見えた雑貨屋の店構え。カフェで出てきたグラスの形。見あげた空の、あまりの青さに。あのひとを、思う。こういうの、すきそうだな。一緒に見たいな。逢いたいな。逢いたいんだ。風が吹く。ふわり香ったその匂い。胸が、きゅって。

声が聴きたい。ねぇ、逢いたい。

こんなキモチ。知らなかったんよ。

いとおしいとか。 守りたいとか。 すきだとか。 そういうんじゃあない気もする。

よぉ、わからん。 胸に心に、 躰中に巡る渦巻く。 抑えられない感情が。

自分にこんなココロがあったなんて。

 

あの日ふたりで見あげた空は、 記憶の中でいっそう鮮やかに。あおく、澄んで。 泣きたいのかも知れんけど。

じゃけぇ、 空っぽで。空っぽで。からっぽ、なんよ。息ができない。

あの日ひとりで見あげた空はただひたすらに、

あおくて。

澄んで。

なんで? ・・・・・・居らんのに。

なんで空が、

泣くことすらできない。

背中に、気配を願って。振り向いても。泣くことすらできない。 空っぽだから。

望んでいたそのまばゆい世界は。その場所は。 光が溢れて、でもそれは偽物の。 あのカメラに向かって、誰のための愛をうたう?

フェイクがリアルを。 知らない誰かの望む何かになって。 覆われていく。

足許から。じわりじわりと浸食されて。 あいしてるすきだと、誰かが名を呼ぶ。

からっぽの自分。フェイクを纏って。 ソウダコレガノゾンデイタアノセカイダ。

うたさえうたえれば。それでいい。 たとえ現実に居る自身の姿が、言葉が。 そのすべてがフェイクだとしても。

おれの瞳に映るこの世界が、 あのひとのいないそのすべてのこのせかいが。