某所へ既出のモノガタリ 一部

 

火を点ける為だけに一度だけ吸い込んで。灰皿代わりの陶器の皿に放置した。

アイツの『ニオイ』が部屋に満ちていく。

嗅ぎ慣れたニオイ。ある意味安心するニオイ。

含んだ煙りを細く噴き出した。・・・・・・口の中が苦い。

「・・・・・・・・・・・・、」

不毛だなと思う。

なんの為にかなんて自分自身にもわからない。

強いていうなら自分への制御? 抑制?

 

――――――溺れないために?

 

「・・・・・・いまさら?」

 

くすりと嗤う。ぎしぎしと、座っている椅子の背凭れが軋んだ。

 

★☆★☆

 

そわそわしている。

先刻から、見ない様にと自制している癖にふと気づくと時計に視線がとまっている。

 

そわそわしている。

あと5分とか。あと2分とか。1分経つのが遅い。

 

―――――チャイムが鳴る。

 

躰がびくりと跳ねる。鼓動が早まる。

ゆっくりと振り向き、ドアを凝視して深呼吸を繰り返す。

 

ピンポーン。

 

少しの間の後。また鳴った。

椅子から立ち上がる。走り出したい気持ちを抑え、玄関のドアを開けた。

見上げる。背の高い彼を。