さかなはこどくをしっているのかな、

オリジナル小説です。

 

 

 

 

 

あれ? ぽつりと、一粒。 落ちてきたと思った途端。 まるでバケツをひっくり返したみたいに。 土砂降りの雨。 「‥‥‥孤独やな、」 「は?」 眼についた喫茶店に飛び込んで。 親切にもそこの店主が貸してくれたタオルで、濡れた服とアタマを拭いて。 珈琲をふたつ注文をした。 初老の店主は、静かに丁寧に。 無駄のない所作で珈琲を淹れている。 ふわりと。 芳しい香りがこぢんまりとした店内に満ちる。 「‥‥‥なにが、です?」 そう俺が問うと。 窓の外を見ていた彼がくいっと俺に顔を向けた。 「なんや魚の気分や」 「‥‥‥え?」 このひとのことばには、いつも戸惑わされる。 ことり、 テーブルに置かれるカップ。無言で軽く頭を下げ、カウンターの向こうに戻る店主。 「えぇニオイ」 彼はくんくんカップに鼻を近づけて香りを嗅いだ。 雨は激しく。 窓を滝のように伝い、外の風景を遮断している。 店内に他に客は居ない。 BGMも流していない店内は、静かで。 「水槽に居るみたいやない?」 「水槽?」 「雨。‥‥‥ガラスがな、水槽みたいやなぁ、思ぉて」 「‥‥‥」 「飼われとる魚は、こんな気分かなぁ」 「さぁ、‥‥‥どうでしょうね、」 魚‥‥‥ねぇ‥‥‥、 「なんや、悲しなる」 「‥‥‥、」 「切り離されたみたいや」 世界から、 そう呟いて彼は、珈琲を一口、口に含む。